2023.06.13

目指せ!モノづくり集団

 

最初に申し上げたい。ボクは熱狂的なオーディオマニアではないので、その筋の方はこれから書き連ねるボクの戯言を生暖かい目で見守っていただきたいのである。

数年前、自室で音楽を聴くために真空管アンプを購入した。

真空管アンプといえば「それなりの環境」と「お金」と「聞き取れる耳」が必要な上級者向けの音響機器なのだが、最近はパソコンにつないでそこそこの音が出せるお手軽なものもあり、当然ボクが購入したものもそういった類のものである。一般的にこの真空管アンプの音は「柔らかい」とか「温かみがある」などと表現されている。トランジスタが普及してラジオやテレビがどんどん小型化してゆく過程の中で、表舞台から姿を消したかと思われていた真空管は今でも根強く生き残っている。我々を取り巻くテクノロジーはアナログからデジタルへものすごいスピードで移行しているが、その求め行きつく先はアナログならではの「温かみ」なのかもしれない。

 

2020年、我が社において別々の部署だった撮影、編集、CG、録音といった技術セクションを一つの部署にまとめた。

同じ映像制作に従事するクリエイター同士が部署の垣根を越えて意見を出し合い一つのものを作る…そんな自由でクリエイティブな環境を構築するためだ。そして、その部署を「アイオーラボ」と名付けた。「I(アイ)」はImagination(想像力)、「O(オー)」はOriginality(独創性)の意味で、二つともモノづくりの基本となるワードである。映像は物理的な形は無い。だけど見た人にワクワクやドキドキを与えることができる。そして見た人にワクワクやドキドキを伝えるためには、クリエイター自身がワクワク、ドキドキを楽しんで作らなきゃいけないと思う。動画の1コマは一瞬で通り過ぎてしまうけど、その1コマに自分の持てる技術力と、アイデアと、感性をどれだけ注ぎ込めるか、そのこだわりこそがモノづくりの原点だと確信している。
ボクたちが目指すモノづくりは前述の真空管に似ているかもしれない。扱うものはデジタルデータだけど、そこを通過することで「人が作った温かみ」に変換される。アイオーラボは、そういった血が通ったものを作れるクリエイターが育って行く場所であることを目指している。

今日もお気に入りの真空管を差し込み、アンプの電源を入れる。
通電した真空管の電極には、ほのかで温かみのある光が灯るのだ。