2026.06.01

『卵焼き』か、『玉子焼き』か

番組制作の仕事をしていると、日々さまざまな「言葉」と向き合う。映像は視覚の情報が中心だと思われがちだが、実際にはテロップ一つで番組の印象や伝わり方が大きく変わる。先日、そのことを改めて実感する出来事があった。

 

制作中の番組で、お弁当の定番料理である「たまごやき」をテロップに入れた際、こちらでは「玉子焼き」と表記していた。しかし、お客様から「記者ハンドブックでは“卵焼き”が一般的」とご指摘をいただいたのである。

 

実は制作時、「玉子焼き」にするか「卵焼き」にするかはスタッフとも少し話題になっていた。僕の中では、「卵」はさまざまな動物の卵全般を指し、「玉子」はニワトリの卵、しかも料理された状態を表すような感覚があった。インターネットで調べても、どちらも誤りではないという意見が多かったため、最終的に「玉子焼き」を採用していた。

 

しかし、放送業界では多くの人が見る情報を扱う以上、表記の統一はとても重要である。誰が見ても分かりやすく、誤解を生まない基準が必要だ。そのために「記者ハンドブック」のような共通ルールが存在している。今回の件は、その大切さを改めて学ぶ機会になった。

 

一方で、今回のやり取りを通じて、日本語の持つ豊かな表現にも改めて感心した。

 

日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字という三つの表記があり、それらを巧みに使い分けながら、微妙なニュアンスや情景、感情まで表現している。同じ言葉でも、表記が変わるだけで受ける印象が変わるのだから面白い。

 

例えば「鮭」と「シャケ」。生き物としては「鮭」と書くが、料理として食卓に並ぶと「シャケ」と表現されることがあるそうだ。一説には、江戸っ子が「サケ」をうまく発音できず、「シャケ」となったとも言われている。真偽はともかく、そうした言葉の変化や背景に、日本語独特の粋や味わいを感じる。

 

また、日本語には前後につく言葉によって漢字や表現が変わるものも多い。同じ読み方でも、場面や文脈によって意味や印象が変化する。その曖昧さは時に難しさでもあるが、同時に日本語の奥深さでもあるのだと思う。

 

もちろん、仕事として情報を発信する以上、基準を守ることは欠かせない。今後は「記者ハンドブック」を常備し、より正確な表現を心掛けていきたいと思う。

 

 

 

ただ、それだけではなく、日本語が持つ豊かな表現や、その言葉に込められた背景にも目を向けていきたい。正しさを学びながら、言葉の面白さや美しさも大切にできる制作者でありたいと思っている。

 

s.morita