2025.11.28
「はっとする心」
ビジネスの現場では、成果を安定的に生み出すために、プロセスの標準化や効率化が欠かせません。特にクリエイティブ領域においても、スピードと再現性は競争力の源となります。しかし一方で、効率だけを追い求めると、組織から徐々に失われていくものがあります。それが 「はっとする心」 です。私が社会に出て、MAを担当する技術者としてお世話になった会社の創業社長から「はっと驚く心」を持つことが創造的なものつくりのコツだと教わりました。作曲家でもあった創業社長は「音」の扱いには厳しい方ではありましたが、純粋で感性が豊かな方でした。
それもあり、我社では「はっとする心」で新たな感動価値を創造する企業をめざすことを理念に掲げています。
「はっとする心」とは、予測を超えた情報に触れた瞬間の、感性の反応です。固定化された視点が揺さぶられ、価値の見直しや新たな発想へとつながる“認知のジャンプ”とも言えます。
実はこの力こそ、企業が変化を機会に変えていく上で欠かせない資源になります。
市場が成熟し、AIが日常業務の多くを代替する今、差別化の源泉は「どれだけ効率よくこなすか」だけではなく、「どれだけ新しい問いを立てられるか」 に移ってきています。新しい問いは、AIが得意とするデータ分析だけでは生まれません。日常の中の違和感や、小さな驚きに敏感であることが、次の価値創造のスタートになります。
経営の視点でいえば、「はっとする心」を持つ社員が多い会社は、次の3つの特徴を備えています。
〇 視点の転換が速い
変化を受け入れる柔軟性が高く、新しい事業機会を発見しやすい。
〇 アイデアの質が底上げされる
経験や役職に関係なく、気づきが共有されることで組織の創造力が広がる。
〇 組織文化が前向きになる
“小さな気づき”を価値として扱う文化が、挑戦への心理的安全性を生む。
逆に言えば、この感性が鈍ると、企業は「同じことを上手に繰り返す組織」へと徐々に収束していきます。それは短期的には安定を生むものの、長期的な競争力を失う危険を孕んでいます。
だからこそ私たちは、業務の効率化と同じくらい、“気づきが生まれる余白” を組織に残す必要があると考えています。立ち止まる時間、余暇の過ごし方、部門を越えた会話、インプットを広げる習慣。こうした一見非効率に見える行為こそが、クリエイティブ企業にとっての創造資源となると信じています。
「はっとする心」は、組織文化として育てられるものです。
どんな規模の企業であっても、「今日どこにはっとしたか」をメンバー同士で語り合える組織は、必ず強くなります。変化の大きい時代だからこそ、その“心の敏感さ”を企業の力に変えていきたいものです。
k-ono